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現在は故郷のボルドーで息子とレストア・ガレージを営むポール・ブラック氏。
1970~74年にBMWのチーフデザイナーを務める以前は、メルセデス・ベンツでキャリアを積み、一時戻ったフランスのデザイン会社で高速鉄道TGVの車両素案を描き上げた。「モダンなデザインを描きすぎて、メルセデスをクビになったのさ(笑)」。
そう不敵に笑う彼が、BMWでまず手掛けたのは初代5シリーズ(E12)。
伸びやかで直線的かつ、空気を切り裂くクサビのようなウェッジ・シェイプは、初代3シリーズに受け継がれた。
自身でステアリングを握るのが大好きな彼は、3シリーズの内装に仕掛けを凝らしたという。
ドライバーを取り囲むようにセンターコンソールを配置した「エゴイスト・コックピット」だ。
後にM1となったプロトタイプ「ターボ」や、世界一美しいクーペとたたえられた初代6シリーズをも描いたブラック氏は、「精密なプレスラインによる優雅さ、グラスエリアの透明感が重要」と語る。
高級車がみな大型車だった時代、初代3シリーズがいかに颯爽としてモダンに映ったか。
その溌剌とした若さと比類ない実用性の完璧なマリアージュは、彼の手からしか生まれ得なかったのだ。