FIA世界耐久選手権(WEC)の第7戦として9月26日(金)〜28(日)に開催された「富士6時間耐久レース(6 Hours of Fuji)」。HyperCarクラスに参戦している2台のBMW M Hybrid V8と、LMGT3クラスの2台のBMW M4 GT3 Evo。4台のマシンと12人のドライバー、そしてそれを支えるチーム・クルーたちの戦いをレポートします。
記念すべきWEC100戦目。富士の予選で手応えを掴む。
2012年にシリーズが発足し、今回のレースで記念すべき100戦目を迎えるFIA WEC。華やかな祝祭ムードに包まれる富士スピードウェイにおいて、9月26日・27日にフリープラクティスと予選が行われました。
LMGT3クラスには31号車(The Bend Team WRT:ヤセル・シャヒン/ティムール・ボグスラフスキー/アウグスト・ファルフス組)と46号車(Team WRT:アハマド・アル・ハーティ/バレンティーノ・ロッシ/ケルヴィン・ヴァン・デル・リンデ組)、2台のBMW M4 GT3 Evoが出走。予選アタックの結果、それぞれクラス13番手と11番手(総合29番手と32番手)のグリッドを獲得しました。
そしてHyperCarクラスには、15号車(ドリス・ヴァントール/ラファエレ・マルチェッロ/ケビン・マグヌッセン組)と20号車(レネ・ラスト/ロビン・フラインス/シェルドン・ヴァン・デル・リンデ組)、2台のBMW M Hybrid V8がBMW M Team WRTからエントリー。15号車は予選タイムの結果、13番手からのスタートに。20号車は予選上位10台で競う“ハイパーポール”に見事進出し5番手のグリッドを獲得しました。
各マシンのドライバーたちの印象は、一様に好感触。6時間の長丁場となる翌日の決勝に向け、期待が高まります。
決勝レース前に、ファンたちの笑顔があふれる。
9月28日、決勝当日。ファンとドライバーの交流の場であるピットウォークでは、マシンが収まるピット前でBMW Mのドライバーたちも笑顔で、写真撮影やサインに気さくに応じます。レース前とは思えないほどにリラックスしたその様子からは、和気藹々としたチームの良い雰囲気が感じられました。
続いて、グランドスタンドのファンシートへ。BMWのキャップやシャツに身を包み、応援のための大きなフラッグを携えたBMWファンたちが集います。スタートの時を待ち望んでいるその表情には、日本へとやってきたWEC、そしてBMW勢への期待が色濃く滲んでいるようでした。
さらにグランドスタンド裏イベント広場のBMWブースでは、レーシング・マシンのM4 GT4をはじめ、M2 クーペやM5 ツーリングなど市販のBMW Mモデルが居並んでいます。こちらでもそれぞれのディテールを間近でチェックしたり、実際に乗り込む人々の姿が多く見られました。
6時間の長く激しい戦い、ついにスタート。
決勝レース直前。ホームストレート上にマシンがスタンバイする、その合間を歩くグリッドウォークへと足を向けます。BMW Mのチーム・クルーのなかには、どこで手に入れたのか「必勝」と書かれたハチマキを巻いているスタッフもいて、日本でのレースを心から愉しんでいるよう。路面状況はドライ、天気はやや曇り気味。レースには絶好の空模様です。
そして午前11時、6時間の決勝がスタート。セーフティカーに先導された2周のフォーメーション・ラップの後、シグナル・グリーン。大きな混乱もなくスタートが切られたと思ったのも束の間、コースアウトや接触が相次ぐ荒れ模様の展開に。開始15分後、マグヌッセン選手が乗る15号車が後続車両との接触によりスピン。幸いにも大きな遅れをとることなくレースに復帰しますが、ボディにダメージを抱えてしまいます。一方LMGT3クラスのBMW M4 GT3 Evoは2台ともスタート時よりも順位を上げ、さらに上位を狙う様相です。
スタートから45分後、ダメージを抱えながらも健闘していた15号車がピットイン。通常作業のほかにボディの交換作業を行った関係で、タイムをロスしてしまいます。続いて20号車、31号車、46号車も最初のピット作業をクリア。ドライバーの交代なく、レースは第2スティントへと入りました。
特別な体験、その後に訪れた悲劇。
クルーたちの作業が落ち着いた頃を見計らい、レース中のピット内の様子を特別に見学させていただきました。BMW M Team WRTのピット内には数多くのモニターが置かれ、レースの模様やマシンのデータを映しています。多くのクルーはリラックスしながら中継映像でレースの展開を見守る一方、リアルタイムのデータが映し出されるモニターの前にはデータ・エンジニアが貼り付き、その推移を注視しています。多くのメンバーがそれぞれの役割を完璧にこなすために、常に連携し合う。そんなプロフェッショナルなチームワークを感じることができました。
スタートから2時間が経過し、レースがいくらか落ち着き小康状態を得たかと思ったその時、衝撃的な光景がスクリーンに映し出されました。なんとマルチェッロ選手へとドライバー交代を終えてピットアウトしたばかりの15号車が、フェンスに接触しクラッシュして止まってしまっています。後に判明したところによると、原因はギヤ・ボックスのトラブルで急減速した前方のマシンを避けようとした結果、コントロールを失いコースアウトし、コーナーのアウト側フェンスに接触してしまったとのことでした。故意ではなく、またマルチェッロ選手にも大事がなかったとはいえ、マシンは大きく破損しリタイヤ。序盤での接触も含め、15号車にとってはなんとも不運な富士ラウンドとなってしまいました。
戦略は、コース上のバトルだけではない。
15号車のクラッシュに伴いコース上はFCY(フル・コース・イエロー)が宣言されます。破損したマシンの回収とガードレールの修復のため、40分弱にわたりセーフティカー先導による周回が続き、スタートから2時間38分が経過したところで、ふたたびレース再開となりました。この時点でHyperCarクラスの20号車は15番手、LMGT3クラスの31号車と46号車もクラスの中団あたりに位置し、周回を重ねます。
ふたたび大きく情勢が変わったのは、スタートから3時間半を過ぎた頃。HyperCarクラスのマシンとLMGT3クラスのマシンがコース上で接触し、HyperCarクラスのマシンがクラッシュしたことで2度目のFCYが発動。このタイミングで各車はピット作業等を済ませますが、20号車は好タイミングでピットへ向かったことで、コース上でのバトルなくポジションをアップすることに成功。25分ほど続いたセーフティカー・ラン後は、シェルドン選手のドライブで8番手まで順位を戻すことに成功しました。
果敢なる攻防。LMGT3はラストまで息が詰まる展開に。
レースが残り2時間を過ぎると、LMGT3クラスのバトルが白熱してきます。31号車のファルフス選手と46号車のケルヴィン選手がクラス11-12番手に連なって走行していましたが、ここから猛然と前を追ってゆく展開に。残り1時間半となった段階で、気づけば両者はクラス3-4番手にジャンプ・アップしていました。しかし、クラス2番手のマシンを抜きあぐねているうちに後続が追いつき、クラス6番手までの5台が団子状態に。その乱戦を避けるように、まずは46号車が先んじて給油のためピットへと向かいました。そしてクラス2番手を奪取した31号車も、残り1時間強でピットへ向かい給油を行います。
ライバルたちも給油を済ませた残り45分の時点で、ケルヴィン選手の46号車がクラス・トップに立ち、ファルフス選手の31号車もクラス3番手へ。このまま最後まで走り切るかと思われましたが、ラスト30分で46号車が無念のピットインを余儀なくされます。周回数ではなく時間で区切られるタイム・レースのため、燃料計算が難しい点に翻弄される形となってしまいました。そしてラスト5分、ギリギリまで粘った31号車も給油のためピットイン。しかし順位を争っていた他車も同時にピットインしたため、そのロスは最小限に抑えられました。
ついにフィニッシュ。31号車はクラス3位で表彰台を獲得。
そして午後5時。フィニッシュ・ラインを続々とマシンがゴールし、6時間の戦いは終わりを告げました。HyperCarクラスの20号車は手堅い走りで中盤からのポジションをキープし、最後のセッションはフラインス選手がドライブし8位入賞。LMGT3クラスは、終わってみれば予選の順位から大幅なジャンプ・アップとなる3-4フィニッシュを達成。LMGT3クラスの表彰台に、31号車のシャヒン、ボグスラフスキー、ファルフスの3選手がのぼりました。
悲劇も、歓びも、さまざまなことが詰まった富士での濃密な6時間を経て、BMW Mの戦いは続きます。次の舞台は中東、バーレーン。FIA WECの2025シーズン最終戦となる一戦は、11月6日(木)〜8日(土)に、バーレーン・インターナショナル・サーキットにて開催されます。
来年も富士スピードウェイでのFIA WEC、さらにはGT World Challenge Asiaも開催予定です。いずれの大会もBMW Mは参戦予定となっていますので、ぜひ現地のサーキットへ足を運び、大会の熱狂、興奮を全身で感じてみてはいかがでしょうか。
また、鈴鹿サーキットで開催された「2025 Intercontinental GT Challenge 第4戦 第49回 SUZUKA 1000km」へ参戦したBMW Mドライバーのインタビュー記事も公開していますので、こちらからご覧ください。